「イギリス駐在員の不倫率は、ほぼ100%らしい」
そんな話を聞いたら、思わず「本当に?」と聞き返したくなる。100%に近いということは、ほとんど全員が不倫しているという意味だ。さすがに話を盛りすぎではないか。そこで、この数字に根拠があるのか調べてみた。
結論から言うと、イギリスにいる日本人駐在員の不倫率が「ほぼ100%」だと裏づける調査は確認できなかった。
日本の労働政策研究・研修機構には、海外派遣勤務者とその配偶者を対象に、仕事や現地での暮らしを調べた資料がある。しかし、そこからイギリス駐在員の不倫率は分からない。英国の研究にも「海外で新たな性的パートナーができた人」を調べたものはあるが、対象は英国在住者であり、イギリスに赴任した日本人駐在員ではない。海外で交際相手ができたことと、不倫をしたことも同じではない。
では、なぜ「ほぼ100%」などという噂が広まるのだろう。
理由の一つは、不倫した人の話だけが強く記憶に残ることだろう。毎晩家に帰って家族と夕食を食べている人の話は、誰もわざわざ広めない。一方、誰かの秘密の交際が発覚すれば、職場や知人の間で話題になる。数件の出来事を何度も聞くうちに、「駐在員には多いらしい」が「駐在員はみんなそうらしい」に変わっていく。
海外生活ならではの事情も考えられる。日本の家族と離れて暮らす人もいれば、家族で赴任しても、それぞれが新しい環境に慣れるまで苦労する人もいるだろう。職場以外の人間関係を一から作る中で、誰かとの距離が急に縮まることは想像できる。ただし、そうした環境があることは、不倫率が高い証拠にはならない。
この噂を調べて分かったのは、駐在員の不倫率ではなく、刺激的な数字の強さだった。「不倫する人もいる」より「ほぼ100%」のほうが、ずっと人の目を引く。そして、いったん数字が独り歩きすると、根拠を確かめる人は少なくなる。
イギリス駐在員の不倫率がほぼ100%――その噂を事実とすることはできなかった。ただ、不倫の話ばかりが耳に入り、誠実に暮らしている人の話は聞こえてこない。そこに、この噂が妙に本当らしく感じられる理由があるのかもしれない。










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