イギリスの若者はテクノロジーに慣れすぎた?ウイルスへの警戒が抜け落ちるデジタル世代

イギリスの若者にとって、スマートフォンもインターネットも、生まれたときから身近にある存在だ。友人との会話、買い物、勉強、娯楽まで、画面を通して済ませられる。大人が操作に迷うアプリを、若者はためらいなく使いこなす。その姿を見て「この世代はテクノロジーに詳しいから安心だ」と考えると、安全への理解を見誤る。

使い慣れていることが、危険への警戒を弱める場合がある。コンピューターウイルス、不正なソフトウェア、アカウントの乗っ取り。日常の便利さの裏側にあるこうした問題を、「自分には関係ない」と受け止めてしまう油断がある。

英国の通信規制当局Ofcomが2026年5月に公表した報告では、保護者の回答によると8~17歳の99%がインターネットを利用していた。一方、同年代の62%がオンライン情報の真偽を判断することに自信があると答えながら、全体の31%は「自信があるのに、提示された偽のSNSプロフィールを正しく見抜けない」という状態だった。利用の広がりと判断力の間には、明らかな隙間がある。ofcom.org.uk

安全行動にも同じ問題が見える。スコットランド政府が紹介した2021年の若者調査では、83%が自分のアカウントや端末の安全性に自信を示した。しかし、複数のアカウントや端末で同じパスワードを「決して使い回さない」と答えたのは7%にとどまり、18%は「いつも使い回す」と回答した。ハッキングされたときの相談先を確実に知っていると答えた人も、約3分の1だった。地域と調査時点は限られるが、自信が十分な備えにつながっていないことを示す結果である。gov.scot

なぜ、これほど身近なテクノロジーに対して油断が生まれるのか。私は、便利な仕組みが完成した環境で育ち、その仕組みを意識せず使えることも、一因になっていると考える。画面を押せば動く。パスワードは端末が覚えてくれる。アプリは自動で更新される。利用者が内部を理解しなくても、日常は進んでいく。

その快適さの中で、「使える」という感覚が「安全も分かっている」という自信に変わってしまう。毎日SNSを使っているから、怪しい相手も見抜けるはずだ。新しいスマートフォンだから、危険なものは自動的に排除されるはずだ。こうした思い込みが入り込む余地がある。

英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、スマートフォンやパソコンの安全性が向上する一方、攻撃する側の技術も向上していると説明している。新しい端末を買ったときや、しばらく安全設定を確認していないときには、保護の状態を見直すよう勧めている。最先端の製品を持つことだけで、安全が完成するわけではない。National Cyber Security Centre

そして、日常的に「ウイルス」と呼ばれている危険は、それだけに収まらない。情報を盗む不正プログラムもあれば、偽のログイン画面で利用者にパスワードを入力させる詐欺もある。NCSCの説明では、フィッシングのリンク先は、不正プログラムを含む場合も、機密情報や送金をだまし取るために作られている場合もある。National Cyber Security Centre

つまり、端末がウイルスに感染していなくても、利用者の判断を通じて被害が起きる。例えば、「アカウントを停止します」というメッセージを信じ、リンク先で自分からパスワードを入力してしまえば、画面を滑らかに操作できる能力は防御にならない。むしろ、確認せず次々に操作する習慣が、立ち止まる機会を奪いかねない。

無料の特典、限定の割引、ゲームの便利な追加機能。魅力的な案内に出会ったとき、「欲しい」という気持ちより先に、配布元や送信元を確かめられるか。見知らぬ通知や不自然な動作に気づいたとき、「まだ使えるから大丈夫」で済ませず、原因を確認できるか。安全意識は、こうした小さな判断の積み重ねに表れる。

大人の側にも、若者の操作の速さを見て、確認や教育を任せきりにしてしまう落とし穴がある。学校や家庭では、便利な使い方と一緒に、怪しい案内に出会ったときの確認方法、被害が疑われるときの相談先まで扱うべきだ。「ネットには危険がある」と言うだけでは、実際の画面で何を確認すればよいのかが伝わらない。

端末やアプリの更新、パソコンのウイルス対策の確認、アカウントごとに異なるパスワードの使用、重要なアカウントの二段階認証。こうした基本を日常の習慣にする必要がある。NCSCも、端末の更新やウイルス対策に加え、メールを含む重要なアカウントへの二段階認証を勧めている。National Cyber Security Centre

イギリスの若者が生まれ育ったデジタル環境は、大きな便利さを与えてきた。その便利さを当たり前に受け取るほど、危険に気づくための意識的な確認が必要になる。「自分は慣れている」という自信のままリンクを開く前に、誰が、何のために、その操作を求めているのかを考える。その数秒を持てることが、自分の情報と生活を守る力になる。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA