「日本は借金大国だ」と、私たちは繰り返し聞かされてきた。では、経済規模が近いイギリスでは、人口1人当たりに換算すると、政府の借金はいくらになるのだろうか。
IMFの2026年10月版「世界経済見通し」によると、2026年の名目GDPはイギリスが約4.27兆ドル、日本が約4.34兆ドルと予測されている。米ドルに換算した経済規模では、両国はかなり近い位置にある。GDP, current …
人口1人当たりの政府総債務を計算すると、イギリスは約6万2,300ドル、日本は約7万600ドル。日本が約13%多いという結果になる。政府債務のGDP比では約2倍の差があるのに、1人当たりの金額では、ここまで差が縮まる。imf.org
この違いを理解するには、借金の総額だけでなく、人口や経済の大きさも一緒に見る必要がある。
比較には、中央政府・地方政府・社会保障基金などを含む「一般政府総債務」を使う。政府が保有する金融資産を広く差し引く前の債務額であり、個人の住宅ローンやカードの借入れは含まない。「1人当たり」は、国籍にかかわらず、その国の総人口で割った統計上の平均を意味する。
| 比較項目 | イギリス | 日本 |
|---|---|---|
| 名目GDP | 約4.27兆ドル | 約4.34兆ドル |
| 人口 | 約6,985万人 | 約1億2,266万人 |
| 一般政府総債務のGDP比 | 102.0% | 199.4% |
| 政府総債務の総額〔計算値〕 | 約4.35兆ドル | 約8.66兆ドル |
| 人口1人当たりの政府総債務〔計算値〕 | 約6万2,300ドル | 約7万600ドル |
| 比較用の円換算〔1ドル=150円と仮定〕 | 約935万円 | 約1,059万円 |
※2026年の数値はIMFの推計・予測。総債務額は名目GDPに債務のGDP比を掛け、1人当たり債務は1人当たり名目GDPに同じ比率を掛けて概算した。円換算は比較のための仮定で、現在の為替レートによる換算額ではない。GDP, current …
日本の政府総債務は、ドル換算ではイギリスのほぼ2倍だ。一方、日本の人口はイギリスの約1.76倍ある。大きな債務を、より多くの人口で割るため、1人当たりの差は約13%になる。
ここで気を付けたいのは、1人当たりの借金額が近くても、それを支える経済の大きさには差があるという点だ。
IMFの2026年予測では、1人当たり名目GDPはイギリスが約6万1,100ドル、日本が約3万5,400ドル。イギリスは日本の約1.7倍になる。GDPは個人の給与や手取り収入とは異なるが、日本では、1人当たりに生み出される付加価値に対して、より大きな政府債務が積み上がっていることが分かる。imf.org
ただし、ドル建ての数字は為替相場にも左右される。円安になると、日本のドル換算GDPは小さく見える。生活の豊かさを考える際には、物価、住居費、税負担、公共サービスなども合わせて見る必要がある。
イギリスの借金をポンドで調べると、別の数字が出てくることもある。英国統計局(ONS)によると、2026年9月末の「公共部門純債務」は約3兆ポンドだった。人口約7,000万人で単純に割れば、1人当たり約4万3,000ポンドになる。Office for National Statistics
この数字は、上の比較表とは指標が異なる。英国の公共部門純債務は、現金などの流動資産を差し引き、中央銀行なども含む公共部門を対象にしている。日本の総債務とそのまま並べると、借金の範囲も、差し引く資産も揃わなくなる。日英比較では、同じ年・同じ指標を使うことが大切だ。Office for National Statistics
日本の数字にも注意点がある。IMFは2026年、日本の一般政府総債務について、政府内部の保有分を重複計上しないよう調整し、額面で評価する基準へ変更した。過去に報じられた「GDP比240~250%」と今回の数字を比べ、短期間で借金が大幅に減ったと解釈することはできない。imf.org
そして、「1人当たり約1,000万円」という表現は、国民それぞれに、その金額の返済請求が届くことを意味しない。政府が発行した国債は、保有する人や金融機関にとっては金融資産でもある。財政を考える際には、債務に加え、政府の資産や、誰が国債を持っているかも確認する必要がある。
IMFは日本について、国内の投資家層、円建ての借入れ、比較的長い返済期限、政府の金融資産がリスクを和らげる要因になると説明している。同時に、多くの資産には用途の制約があり、政府が日々の支出のために自由に使えるわけではないとも指摘している。elibrary.imf.org
暮らしへの影響を考えるうえでは、金利も欠かせない。同じ金額の借金でも、利息の負担が増えれば、政府の予算を圧迫する。既存の固定金利国債の利息が一斉に上がるわけではないが、新しく借りる時や借り換える時には、その時点の金利が効いてくる。
イギリスでは、2026年9月の中央政府の利払い費が109億ポンドに達した。これは物価連動国債の調整額などを含む統計上の費用で、ONSはインフレが利払い費を変動させる仕組みを説明している。Office for National Statistics
利払い費が膨らめば、増税、ほかの支出の抑制、追加の借入れなどをめぐる判断が厳しくなる。政府債務は、病院、学校、道路、社会保障といった日常のサービスにも関係する問題なのだ。
GDPで肩を並べるイギリスと日本。人口1人当たりの政府総債務では、日本が約13%多い。しかし、財政の持続性を判断するには、その金額に加えて、経済がどれだけ成長するか、税収がどう増えるか、金利がどこまで負担になるかを見る必要がある。借りたお金が将来の生産性や暮らしの改善につながっているかも、問われるべきだ。










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